電気設備は思いもよらないトラブルや事故に遭遇する事があります。
しかし、その苦い経験によって人は成長していきます。
そんな苦い経験をたくさんした筆者が、読者に少しでもヒントになるようにとノウハウを詰め込んだ電気技術者必見のバイブル「電気技術者 現場バカのしくじり」を紹介させていただきます!
今回は電気を勉強している人に向けたオススメ書籍の紹介です!
- 選任されたばかりの新米電気主任技術者
- 電験三種を取得したけど実務経験が無い人
- 電験勉強の休憩がてらに電気知識を増やしたい人
『電気技術者 現場バカのしくじり』とはどんな本?
著者は経験50年の超ベテラン電気技術者
電気設備というものは頻繁にトラブルが起きるものではありません。
私も電気主任技術者をやっておりますが、幸いにも大きなトラブルは未だ未経験です。
一方、筆者は50年という長い期間現場の第一線で働きつづけた超ベテランです。(通称“現場バカ”)
電気に50年携わっていた人が書く本、気になりませんか?
今回はその一部とオススメの理由を説明させていただきますね。
「電気技術者 現場バカのしくじり」の構成
この本の構成は大きく3つからなります。
- トラブルからの教訓 ”しくじり話”
- 自家用設備の保守管理
- 電気のQ&A
この他にも最後に「現場よもや話」など入っていますがメインはこの3章になります。
しくじり話だけでなく電気設備の保守管理方法や電気の疑問に答えてくれているところが良いですね。
電気は失敗談から学ぶのが一番
電気技術者は失敗が許されません。
少々のトラブルならまだしも、電気のトラブルは“感電”や“停電”に繋がります。
電気技術者は失敗して学ぶ事ができない職種なんです。
ではどうやって学ぶのか?
それは人の失敗談を聞いて学ぶのです。
反面教師というものですね!
この本にはその失敗談がたくさん詰め込まれております。
しくじり談①:電磁誘導による火花で火災発生!
とある休日のある日、筆者のグループが担当する工事現場で消防車が30台駆けつける暗きょ内火災が発生しました。
当該工事現場はOFケーブルを使用していたので喫煙場所の配慮など火災には気を配っていたのになぜ・・・?
そして漏電遮断機が動作していないので漏電火災でもない。
原因は停止中のOFケーブルへ仮給油している給油管からの出火でした。
送電中の超高圧地中電線路の電磁誘導によって給油管には15Vの電圧が発生していたそうです。
給油管の三相短絡接地しておけば火災も発生しなかった・・・
「電磁誘導の力」によって改めて三相短絡接地の大切さを勉強させられたそうです。
高圧電線は電磁誘導を気にしないと、筆者のしくじり談のように火災や感電が発生します。
高圧電線の近くの使用していない電線は忘れずに三相短絡接地をしましょう!
しくじり談②:温泉を掘り当てた??
ある時、取引先の社長から「アース線が埋めてある付近から、2日ほど前より湯気が出てくるようになった。この地下にもきっと温泉の水脈があると思うのでアース線をどこかに移動したいのだが」と相談を受けたそうです。
近くは温泉地帯ということもあり温泉が出てもおかしくないのだが筆者は過去に“漏電”で地面から湯気が出ていた顧客のことが頭の片隅に浮かんだそうだそうです。
現場をみて硫黄の匂いが無いことからすぐに漏電だと分かり、クランプでアース線を測定していみると5Aも流れていたそうです!
設置抵抗が55Ωであったので計算上発熱量はおよそ1500W、この熱で雪解け水が蒸気となったのですね!
その工場では漏電遮断機が付いておらず漏電がそのままとなっていたみたいです。
やはり「漏電遮断機」は絶対に必要ですね。
それにしても漏電を温泉と間違えるなんて・・・笑
電験勉強では学べない保守管理を勉強できる
この本はしくじり談だけでなく自家用設備の保守管理についても書いてくれております。
高圧需要家の保護協調:GR・DGRの整定値
電験の勉強をしていれば電気主任技術者に関する知識の殆どを習得できていると思っていませんか?
実は実務に関する知識はまだまだ勉強できていないんです。
その1つに継電器の保護協調があります。
電験勉強ではOCRやDGRの整定方法を学べないのです。
この本では高圧需要家の保護協調について詳しく説明してくれているので非常に勉強になります。
特に地絡継電器(GR)と地絡方向継電器(DGR)については必見です!
「東京電力管内の配電用変電所のDGRの電流感度整定値は一律200mAであり高圧受電設備側は200mAにすることが望ましい。」
この理由についてはぜひ本書をお読みください。
もちろん動作時限整定についても解説してくれていますよ!
自家用発電設備に必要な継電器
昨今の再エネ発電設備導入の急加速によって電気主任技術者、電気管理技術者は発電設備に必要な継電器の導入が求められております。
私が電気主任技術者として勤めている事業場についても最近太陽光発電設備の追加設置の話が出ており継電器の改造工事を検討しています。
電気技術者として自家用発電設備に必要な継電器の知識は避けて通れないのです!
本書では逆電力継電器、不足電力継電器、方向短絡継電器、周波数継電器、三相不足電圧継電器、地絡過電圧継電器の設置目的と整定の考え方を記しております。
現場バカ+電気理論=一流の電気技術者
現場バカには率先してなるべき
本書では現場の最前線で戦う技術者を通称“現場バカ”という愛称で呼んでいます。
電気技術者は現場バカでないと成長できないと私は考えています。
三現主義という言葉があるように、現場で学ぶ事は机上で学ぶ事よりも何倍もの価値があり脳に刻みまれた知識として一人前の技術者に近づきます。
但し、これだけでは電気に詳しい技術者です。
一流の電気技術者はもう一つ上をいかないといけません。
60Hzの変圧器を50Hzで使用する場合の影響を説明できますか?
一流の電気技術者は“なぜそうなるか?”を電気理論で説明できる人だと私は思っております。
私と同じ会社の他事業所(50Hz圏)から変圧器を使わなくなったから使わないか?と連絡がありました。
私の事業所は60Hzだったので、定格周波数が違う変圧器を使えるかどうか疑問に思い変圧器メーカーに確認を取りました。
変圧器メーカーの回答は「50Hzの変圧器を60Hzで使用するのはOK、60Hzの変圧器を50Hzで使用するのはNG」でした。
私はまた1つ新しい知識を得る事ができ電気技術者として成長していたと当初は思っておりました。
しかし本書を読んてその考えは大きく変わりました。。。
本書には50Hz→60HzがOKで60Hz→50HzがNGの理由が電気理論で詳しく説明してくれていたのです。
私が満足していた知識は上辺だけの知識で技術者としてはまだまだでした。
一流の電気技術者は知識の深みが違います。
なぜそうなるか?まで理解しており、“現場バカ”に”電気理論”を足し合わせてこそ一流の電気技術者です。
ここまで気付かせてくれた本書には本当に感謝しています。
一流の電気技術者になる為の知識が本書には詰め込まれております。
以上が「電気技術者 現場バカのしくじり」の紹介です。いかがでしたでしょうか?
電気主任技術者を目指している方はぜひ読んでもらいたい1冊です。
ボリュームがあるので電子書籍での購入もオススメですよ!
皆さんも一流の電気技術者を目指して本書を読んでみてはいかがでしょうか??